女子・父

未就学児

事例13 分娩時の医療行為の適切性について

事案

鑑定対象者:30代女性 

事案概要

分娩時に吸引分娩を56回実施し、吸引を開始してから晩出まで約1時間30分を要し、結果として患児は死亡してしまった。

急速遂娩の実施時期、吸引分娩の態様について、また、蘇生時の換気方法などについて、本件患児死亡に影響を及ぼしたのではないかという事案であった。

考察

1)急速遂娩の実施時期について

より早期に急速遂娩を考慮すべきであったと考えられた。

遷延一過性徐脈が出現した際には急速遂娩の可能性を考慮し、ダブルセットアップ(帝王切開・経腟分娩どちらになってもよいように準備すること)の上慎重に観察する。再度遷延一過性徐脈が出現した際には急速遂娩の決定をすべきであったと考えられ、遷延一過性徐脈後に一過性に頻脈が継続するなど代償機能は認められることから、回避率は上がったと考えられる。

2)吸引分娩の態様について

本件ではNRFSに対する吸引分娩の適応であり、必ずしもST+2まで児頭下降を待つ必要はなかったと言える。本件では吸引分娩開始より複数回(少なくとも2回)吸引を繰り返した際に児頭下降をほぼ認めていなかったことから、吸引手技を中止し分娩進行を見守るのではなく、帝王切開に切り替えるべきであった。

3)蘇生時の換気方法

本件は出生直後から自発呼吸を認めなかったため、まずは初期処置を施行し、そののち自発呼吸がない状態のまま(二次性無呼吸)を確認し60秒以内に人工呼吸を開始することが目標であった。しかしながら、初期処置を施行したことは確認できず、速やかな人工呼吸も開始されていない。気管挿管後も酸素投与の記載は認めるもののバギングを実施したことは確認できない。

 

総括

早期に判断し適切な医療行為を対応することの重要性が浮き彫りになった事案であった。

PAGE TOP